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長くて短く、短くて長い一日 <哀しい物語・10>

相手と旦那さん、そしてその2人の両親との話し合いから数日して手術を施す病院と日程が決まったという連絡が入ったそうだ。話し合いの折、相手と相手の母親のたっての希望で手術当日に病院へ旦那さん一人で来るように言われたという。己のしでかしたことへの罪について現状を目の当たりしてその身に刻みつけて欲しい、自らと自らの娘だけが苦しむのには納得できない様子だったと話し合いに出ていた旦那さんが言っていたそうだ。

旦那さんのご両親は旦那さんが病院に行く日の予定について、彼女を自宅に一人でおいておくのは心配だからと彼女に旦那さんと共にご両親の元へ来た後、旦那さんは旦那さんの母親に連れられて病院へ、彼女は旦那さんの父親と共に旦那さんが戻るのを待つ…という方法を提示してくださったそうだ。しかし彼女は普段でさえ旦那さんのご両親に気を遣っていることを考えると、旦那さんの父親と過ごすというのは現状の精神状態を考えると難しく、また今は出来るだけ旦那さんの傍にいたい気持ちがあったことから、病院の近くで長居をしても問題のない場所を探し、そこで過ごさせてもらえるようにお願いしたそうだ。旦那さんの父親としては彼女の希望に少々不満があった様子だったが、最終的に彼女の気持ちを尊重してくださったそうだ。彼女としてはご両親の提案は本当にありがたくて申し訳なかったけれど、自分の精神状態では迷惑をかけるだけだし、なににより独りで過ごしたかったからと言っていた。確かにただでさえ疲労困憊な状態の上に神経をすり減らすのはただただ辛いだけだろう。

そうして手術当日、彼女は旦那さんと共に旦那さんのご両親の元へ行き、旦那さんの母親と共に相手が入院している病院へ向かったのだという。

相手の状態がすでに妊娠中期に入ってしまっているということで、陣痛促進剤を使用して実際の出産と同様の処置による手術となると彼女は聞いていたそうだ。そして相手とその母親は旦那さんにどれだけ罪深いことをしていたのかを目の当たりにしてもらうため、話し合いの折に旦那さんがその手術に独り処置室内で立ち会うことを希望したそうだ。そのことについて旦那さんのご両親は彼女との間ですら子を設けておらず立ち会ったことすらないのだからと、それだけは勘弁してもらえるよう懇願したそうだ。話し合いの時点ではその懇願に対して相手方が言葉を濁し、日を改めて旦那さんの母親が懇願しに行ったものの結局聞き入れてはもらえなかったのだと、旦那さんの母親が彼女にごめんなさいと謝りながら話してくださったそうだ。これについては旦那さんにも責任の一端があること、そして心身的な負担を強いられる相手のことを考えると、自分が相手と同じ立場だったとしてそうしてもらっただろうかという考えは別にして、その身を切られる思いをしている相手の希望を聞き入れるのは仕方のないことだろうと彼女は理解していたそうだ。

相手の入院している病院で旦那さんと別れた後、旦那さんの母親は彼女と共に時間をつぶすことにしたという。理由として旦那さんの父親には旦那さんの母親と共に手術を待っていることになっていたからだという。旦那さんの父親としては処置室内に立ち会うことは受け入れがたいことであるものの、相手側としてはそれがたっての希望であって今後のことを考えると受け入れざるを得ないと旦那さんの母親が判断したためだったそうだ。実のところ当初の予定では彼女と旦那さんの母親とは別の場所で時間をつぶす予定だったそうだったが、手術がいつ終わるかわからず、喫茶店にしても朝一から長時間居座るには気が引けると言うことで結局彼女と共にネットカフェを利用することにしたらしい。旦那さんの母親と彼女はそれぞれ個室を借りて旦那さんから連絡が入るまで思い思いに時間を過ごすことにしたそうだ。

あらかじめ待機時間が長いことを聞いていた彼女は本やパソコンなどを持ち込み、時間を気にせず集中できることをしていたそうだ。そうでもしないと色々と考えてしまうだろうからと考えた末のことだったという。旦那さんの母親も彼女もネットカフェというものはこの日が初体験だったそうだが、旦那さんの母親も誰にも気兼ねすることなく長居が出来るとまんざらでもない様子だったと彼女は言っていた。旦那さんの母親は時折飲み物を持ってきてくださったり、昼食の心配をしてくださったり、時間延長の手続きをしてくださったりと彼女を気にかけてくださっていたそうだ。彼女は旦那さんの母親の気遣いがとてもありがたかった反面、彼女としてはその気持ちが逆に申し訳ないように思い、出来ることなら1人で静かに過ごしたかった、とそのことについて彼女は少し申し訳ない感じで話していたのを覚えている。

そうして時間をつぶして6時間ほど経ったころ、旦那さんから無事に終了したとの知らせが入り早々に合流したという。旦那さんの母親は旦那さんと合流したとき気を遣って声をかけていたそうだが、彼女は逆に声をかけることはあえてしなかったそうだ。自分だったらあまり何も聞いて欲しくないだろうと思ったからだという。そうして首を長くしても待っている旦那さんの父親の元へまっすぐ戻ったそうだ。戻ったなり旦那さんの父親は旦那さんにこんこんと何かを言っていたそうだが、彼女はその場の雰囲気に居づらくなり少し離れた場所で一通り話し終わるのを待っていたそうだ。一通り話が終わった後、次の日にも旦那さんは変わりなく仕事があると言うことでゆっくりで良いから早々に帰るように言われながら3時間ほどの道のりを彼女が運転して帰って行ったそうだ。

こうして相手の告白という青天の霹靂のような出来事から始まった一連の騒動は、1ヶ月も経たない間に紆余曲折しながらも状況の収束へと向かったのだそうだ。しかしながら状況が収束したからといって何もなかったかのようになるわけではなく、それを彼女が思い知ることになるのはこの日から暫くしてからだったそうだ。


『手紙』というパンドラの箱 <哀しい物語 11>

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