- 2008-05-22 (木) 18:18
- 哀しい物語
旦那さんから事の発端とその経緯、さらにはそこに至ることになった心情を一通り聞いた後、彼女もそれまで思い抱いていた心情を旦那さんに静かに語ったという。話を聞いてみると旦那さんがそうしている間、彼女がのほほんと過ごしているわけではなかったようだ。
彼女は生計を立てるために正社員を続けていたものの時間的に旦那さんとのんびり過ごす時間が少なく、彼女自身もそれがつらかったそうだ。仕事で疲れ切って帰ってきたときは特にそうしたかったが、そういうときに限って旦那さんも疲れていることが多く、そんなつらさを出すまいと独りで耐えていたという。時にはなんのために疲れ切るまで仕事をしているのかとさえ思いながら、独りでこっそり涙していたこともあったそうだ。
いつも同じぐらいの時間に目が覚める彼女に対して、平日は仕事の関係で旦那さんの方が起床が早かったものの、休日となると決まって旦那さんの起きる時間が遅くなったそうだ。つまり彼女の方が旦那さんより早く目が覚める結果になる。ボランティア活動で週末をつぶしてしまう彼女としては、何もない休日ぐらい朝から一緒に起きて有意義に過ごしたいという気持ちはあったが、普段の旦那さんの忙しさを考えると無理に起こすのも悪いと思っていたのだという。そんな睡眠を邪魔しないようにと気を遣い、共にうたた寝で時間を過ごしたり、自分の時間を過ごしたり、たまにこっそり抜け出て朝からバイクで出かけることをしたりしていたそうだ。一見充実していそうな彼女の休日も実は旦那さんへの寂しさを紛らすためもあったらしい。
さらには旦那さんとの夫婦関係にも触れたそうだ。元々そういうことに重きを置いてはいなかったものの、結婚して1年もしないうちに男女としてのスキンシップすらなくなっていったという。仕事で疲れているから旦那さんに無理をさせるわけにはと我慢していたそうだが、彼女にとって心のよりどころの一つだったそうで、それがないのが何よりもそれが最も寂しいことだったと旦那さんに伝えたそうだ。
そんな彼女が抱えていた心情を旦那さんに伝えた後、彼女は言ったそうだ。
「あなたと共に人生を歩み、あなたと共に年老いていくのが夢だったの。あなたと手を繋いで、白髪頭としわくちゃな顔で共に笑顔で過ごすのが夢だったの。こんなことが起きてしまった今でも、その気持ちは変わらない」
と…。旦那さんも涙を浮かべながら彼女の話をきいていたそうだ。そんな旦那さんへ彼女は話を続けたという。あなたはこの先どうしていきたいのか、と。正直な気持ちを教えて欲しい、と。旦那さんは泣きながら、そしてゆっくり考えながら話したという。
「出来れば君とこのまま結婚生活を維持していきたい。でも彼女にしてしまったことに対する重大さを考えると虫が良すぎると思っている。その責任を思って君との離婚を考えているが、離婚後の彼女との婚姻は君のことを考えると出来ないからしない」
と。それを受けて彼女は言ったという。
「私は今すぐ離婚とは考えていない。出来ることならあなたは私にとって大切な人だから共に生きていきたいと思う。でもあなたが離婚を望むなら覚悟を決める。あなたの気持ちが私にないのに一緒にいるのはつらいから」
と。そして続けたという。
「もし彼女が産みたいというなら認知してあげないと駄目だね。中絶しろなんて同じ女性としては言えないから。養育費がかかってしまうけど、それが責任だと思う。堕ろすというなら手術費用を払わないと。もし離婚しないなら私も一緒に責任を取らないとね」
と。その言葉に旦那さんは泣きながらただひたすら謝っていたという。
そうしてお互いの長く穏やかな、そして結婚後初めての切羽詰まった対峙は、星がたくさんきらめく頃にようやく一段落が付いたのだそうだ。
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